マーババービーとマーバケンは持っていたもののまだ人形者ではなかった頃、実家に帰った折、電車で何駅か先のデパートに出掛けいろいろ物色してそろそろ帰ろうかという時だった。
駅への通路がある二階の出入り口に向かったら、そこはエリー祭りだった。
それからさかのぼること約五年。
おもちゃ売り場ではエリー・貴更・レイフ・エイティーンジェニーが、大人の趣味としてのファッションドールとか、子供向けのやぼったい着せ替え人形がここまでお洒落になったとか、そんな感じ(大雑把)の新しいファッションドール時代の到来を告げていた。
いいなーと思って見ていたもののいつでも買えると思い込み、気付いたらそれらは売り場から姿を消していた。
リカちゃんのようにずっと売っているのだと思っていた。
あまり買い集めるという頭がなかったせいかもしれない。
バービーがいるからもういいよ、といったような。
そうか、いつまでもあるものではなかったのか、なら買っておけばよかった…。
それが今目の前にたくさん並んでいるではないか。
貴更、レイフ、18ジェニーはないのかと見渡してみたがエリーだけだった。
再販記念に大々的に売り出しをやっていたらしい。
お洒落さを演出して大人が買いやすい雰囲気だったように記憶している。
もしかしたら大人がターゲットだったのかもしれない。
もう買い逃すまい、と私はエリーを選び始めた。
値段は着るもので変わってくるんだよね、
服なんて後で替えられるんだから安いのでいいや。
前髪下ろしてるのよりワンレンのほうがエリーらしくていい。
選ぶ基準はこんなもんだったと思う。
そして選んだのはショッキングピンクの簡素なボディコンワンピに青のストールで軽くカールが入ったワンレンのエリー。
ワンレンでもストレートやソバージュもあったがあまり気にしていなかった。
ジェニーやマーババービーとは違う大人っぽいボディラインをうっとり眺めているうちに、「そうだ、服を作ろう」と思い立った。
一応裁縫道具はある。
一人暮らしを始める時に母が持たせてくれたやつだ。
布はワゴンセールで買ったオフホワイトのふわふわした風合いのニット地。
当時駅の東西通路にあったデパートの看板のモデルが着ているマントみたいなやつが作りたくて買った布だ。
もちろんそんなスキルはないからその布は放置していた。
これでエリーのドレスを作ろう。
当然型紙なんて作れないから見ごろは適当に裁断したのをホルターネックみたいに巻き付けて前で交差させる。
胸が隠れりゃいいだろ。
スカートもこれまた適当に大きめに切ってぐしぐし縫い縮めて見ごろにまつり付けた。
着脱はできない。
それを夜中の2時3時までかかってやった。
翌日、友人に昨夜遅くまで人形の服を作っていたとちょっと気恥ずかしく思いながら打ち明けた。
これがやってみたらすごく楽しくて途中でやめられなくてね、と。
人形、それもジェニーの友達ということで、一つ年下の彼女に子供っぽいと思われてしまうのではないかと危惧したが(今なら絶対そんな心配しない)彼女は「そういう趣味っていいね!」と感心したように明るく言ってくれた。
あ、これって趣味なのか、そうか。
そう、服作りは自分でも意外なほど楽しかった。
だがまさかその翌年からドール趣味にどっぷり浸かってしまうことになるとはその時は想像だにしなかった。
かなり植毛がスカスカだったので別のエリーを全植毛した際の抜いた髪をこのエリーに植えた。
加減を知らなかったので植えすぎて多毛症になり可愛くなくなってしまった。
植毛は知っていたがお湯パーマは知らなかったのでそのまま長らく放置。
その後お湯パーマを知ったが面倒で更に長らく放置。
お湯ッパしたら驚くほど綺麗になった。
すまぬ、エリー。
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