2013年6月25日火曜日

人形探しの旅・アンナの1



叔母の家に遊びに行った時のこと。


叔母が、髪が広がってどうしようもないのでなんとかしてほしい、
と私に人形を手渡した。


それはリカちゃんより少し小さく、フェイスデザインもリカちゃんの系列とは違う。
なにより手の形や少しむっちりした腕が明らかにタカラドールのそれとは違っていた。


背中の刻印を見るとBANDAIとある。
それがアンナであることを知ったのはもう少し後になってからだった。


私はまだおぼつかないお湯パーマの腕を駆使し
ひさしのように立った前髪にラップを巻き、
後ろを三つ編みソバージュにし毛先を少し切った。


可愛くなったー!と叔母が喜んでくれたので結果オーライだが、
人の人形の髪型を相談なしに変えるなんて今思うと冷や汗ものだ。






90年代、今と比べるとまだ昔からの個人のおもちゃ屋さんが残っていた。
私は行ける範囲を回って古い人形がないか探したものだった。


電話帳を見ていたら某市におもちゃ屋さんがたくさんあった。
これは何か見つかるかもしれない。


ある日自転車で某市行きを決行した。
大通りをまっすぐ行くだけなので初めての道でも迷うことはないが
走ってみるとやたら距離があった。


その市に入ったあたりに露天のような怪しげなリサイクルショップ(?)があったが、
人形が欲しいと言って出てきたのは百均にあるようなペナペナのやつだった。


千円、と言われたが中古でペナペナで服なしの、
お世辞にも可愛いとはいえないあの人形を千円で買う人はいないと思う。
ってか百円でもいらない。







おもちゃ屋さんは駅周辺に集中していて全部で六軒。
駅周辺に集中といってもそれぞれ離れていて、
地図で見ただけでも全部歩いて回るのはかなり大変なのがわかる。
だから距離があることを承知で自転車で行ったのだ。


広めの通りに向かい合わせにあるおもちゃ屋さん、
あまり記憶に残っていないが、片方はベビー向けで
リカちゃんとママが一つずつあった程度だと思う。
もう片方は…多少はあったと思うが忘れた。


もう少し先にあるファンタジックな外観のお店はシャッターが下りていて看板もなく、
この時は目当てのおもちゃ屋さんの一つであるかどうかは確認できなかった。


一軒は廃業。
駐車場になっていた。




駅からまっすぐ行ったお店にはなんと「うたうおにんぎょうジュン」があった。


他のおもちゃの陰にひっそりとあるのを見付け、あまりの珍しさにちょっと迷ったのだが、
さすがにあまり好みでないクラシカルな顔立ちの(1975年発売だ)54cmの大型ドールに
食指は動かず見送った。別に後悔はしていない。


あ、うたうおにんぎょうジュンってオビツの百合沙に似てないか?


古めのジェニーの箱がいくつかと袋入りのアンナもあったが
大きな窓、というよりガラスの壁の際に置いてあり退色が非常に酷く、
欲しかったが諦めた。


そのうちの一つは通常の旧ジェニーだがとても可愛い顔で、
状態がよければなぁと今でも残念に思う。






そのお店を通り過ぎて右に曲がるとおもちゃチェーン店がある。
輸入物のスキッパーがあったが好みでなかったのでスルー。
たしか桂由美ちゃんもあった。
今となっては珍しいので買っておけばよかったかも。


そんなわけで遠出にもかかわらずこれといった戦果はなかった。


後日シャッターが下りていたお店に電話し営業していることを確認してから
電車で(遠さに懲りた)行ったところ棚に並んだ人形の中になんと
綺麗なアンナが二つあるではないか。


見比べて薄い髪色のを選びレジへ。
お店の人と近所の人らしき女性二人が、これはもうなかなかないわよ、
レア物よ~、とにこやかに対応してくれ更に値引きまでしてくれた。






濃い髪色も買っておけばよかったかも、とまた何度か行ってみたが、
そのお店が開くことは二度となかった。


数年後、まさか自分がその市に住むことになるとは当時は予想だにしなかった。